クアトロ家庭科部~20191026~ feat. F

広葉樹の葉が暖色に染まる。
季節は着々と、冬への支度を始めだした。
不定期に開催される家庭科部の活動により、
この日も女将に誘われ、あの調理場へと辿り着いた。
すでに参加者たちは続々と集まっており、
家庭科部の活動開始を今か今かと待ち望んでいた。

――いったい、何が彼女たちの心を駆り立てるのか。
私は家庭科部の実態を、まだ多くは知らない――。

どうもこんにちは。語り手は、自称推理小説作家のFが務める。

家庭科部について、少し説明をせねばならない。
家庭科部とは、
・普段料理をしない
・包丁を触らない
・女子力を上げたい

そんな女性が多く集う。言わば、花嫁修業の場である。

では、家庭科部の活動記録を、記していくことにしよう。

我々は調理場近くにあるお店で買い出しを行い、
お昼過ぎから調理を開始した。

今回のメニューは、
★生姜焼き
★茄子煮
★スイートポテト

となる。女将の指示のもと、分担して調理を進めていくこととなった。

獲物を射るような目が、我々へと向けられた。
緊張の一瞬だ。絶対に、美味しい料理を作らねば。

私は、スイートポテト班の一員となった。
手を動かしながら、他の班の様子を確認してみる。
生姜焼き、茄子煮班は、キッチンの中で作業を行っていた。
野菜や肉を切る作業をしているのであろう。
伏せた表情、そこから放たれる視線は、真剣そのものであった。

スイートポテト班も負けてはいられない。
苦戦しながらも何とか切り終えたサツマイモを、
袋に入れて潰していく。根気の要る作業であった。
ふと、同じくサツマイモを扱う女性へと目をやった。
彼女は皿に並べられたサツマイモを、丁寧にくり抜いている。
サツマイモへと向けられた表情はまるで、新婚ホヤホヤの奥さんのような優しさを持っていた。
料理は食べてもらうものだ。私も見習い、必死に手を動かし続けた。

皆が力を合わせて作った料理の香りは、調理場全体へと行きわたる。
生姜焼きのタレの香り、スイートポテトの芋の香りがとくに印象的であった。

では、出来上がった料理を画像にて紹介する。

★生姜焼き

★茄子煮

★スイートポテト

……なるほど。食卓を彩る、秋の季節に相応しい料理ではなかろうか。
調理場の終了時間が迫っていたため、我々は料理を自社へと運び出した。
自社は、調理場のすぐ目の前に存在する。非常に便利な立地だと、つくづく実感した。

我々は、湧き立つ食欲により、早速食事を開始した。

美味い。美味すぎる。
濃い目に味付けされた生姜焼きは、手元のご飯をあっという間に空に
するのに、十分過ぎるほどであった。
茄子煮も生姜焼きに負けていない。野菜とは思えぬほどのジューシーさが、
私の口内を豊かにする。
スイートポテトは、駆け付けてきた蜂蜜愛好家より拝借した秘伝の密をつけていただく。
至福のひととき。ほとんどの芋を、私は平らげてしまった。

なるほど。これでもかと腹が満たされた私は、ここで確信する。
彼女たちの心を駆り立てる理由は、料理をするという目的だけではない。
皆で一緒に料理をすること、一つ屋根の下で一緒に料理を口にすることも、
家庭科部の活動の魅力だったのだ。
大きなカタルシスを得た私は満足し、この地を後にした。

ふと思い出す。
そういえば、私の包丁捌きは、かなり危険なものだった。
あまりの具合に、心配されたほどである。
事件は解くものであり、起こすものではない。
そう胸に、きちんと留めておくことにする。

――次回の家庭科部の活動を楽しみに、また頑張っていこう。さらばだ。 F

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